ストレスチェック

産業医がいない会社のストレスチェック

公開 2026.09.25更新 2026.09.25読了 約8分
小さな事務所で、外部の専門職とオンラインで打ち合わせる総務担当者
医師がいなくても、始められる。
Editor

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。

「うちは産業医がいないから、ストレスチェックはできない」。2028年の義務化の話をすると、小さな会社の経営者からこの声をよく聞きます。結論として、産業医がいなくても実施はできます。産業医の選任が義務になるのは常時50人以上の事業場で、50人未満の事業場向けには、外部の実施者と地域の窓口を使う組み方が用意されています。

ストレスチェックの実施者とは、質問票の選定や高ストレスの人の評価方法を決め、結果にもとづいて医師の面接指導が必要かを判断する専門職です。医師・保健師のほか、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師がなれます。会社の外の人でもよく、委託先の外部機関に所属する人が実施者になるのが、小規模事業場マニュアルの想定です。

3つの役割を、どこに置くか

産業医がいない会社の組み方は、次の3つの役割をそれぞれどこに置くかで決まります。

役割何をするか置き場所の例
実施者・実施事務従事者質問票の回収、結果の通知、面接指導の要否の判断、個人結果の保存外部の機関(委託先)
社内の実務担当者委託先との連絡、日程の周知、受検の呼びかけ衛生推進者、総務の担当者
面接指導の医師高ストレスで申し出た人との面談、会社への意見地域産業保健センター、または委託先

社内に残るのは、個人の健康情報に触れない仕事だけです。厚生労働省のマニュアルも、事業場の中では個人の健康情報を取り扱わない形を前提にしています。

社内の担当者と外部の実施者の役割を分けて書いたメモ
社内の担当者は連絡と呼びかけ、個人の結果は外部の実施者。線を引いておくと社員に説明しやすくなります。

社長・人事部長が、事務に入れない理由

小さな会社で見落としやすいのが、人事権との関係です。人事に関して直接の権限を持つ監督的地位の人(社長、人事部長など)は、実施者にも、個人の結果を扱う実施事務従事者にもなれません(労働安全衛生規則第52条の10、小規模事業場マニュアル)。

理由は単純で、評価や配置を決める人が回答を見られるなら、社員は正直に答えなくなるからです。制度はストレスへの気づきと職場の改善のためのもので、回答が歪めば両方とも成り立ちません。社員10人の会社で「社長が質問票を配り、集めて、目を通す」やり方は、制度の外になります。

社内に看護師や保健師がいる介護・医療の事業所でも、その人が施設長や人事の責任者を兼ねていれば同じです。資格があるかどうかと、人事の立場にあるかどうかを分けて確かめてください。

面接指導は、地域産業保健センターに頼める

高ストレスで面接指導が必要とされた人が申し出たら、会社は医師の面接指導を行います。産業医がいない会社は、ここで手が止まりがちです。

50人未満の事業場は、最寄りの地域産業保健センター(地産保)に依頼して、無料で面接指導を受けられます。地産保は労働者健康安全機構が運営する支援機関で、全国に約350か所、おおむね労働基準監督署の単位で置かれ、登録産業医がいます。依頼すると、窓口が医師の手配と日程の調整をしてくれます。面接指導のあと、会社は医師の意見書を受け取り、必要な措置を考えます。

地産保は予約の方法や混み具合がセンターごとに違います。2028年4月に全国の小規模事業場が一斉に対象になるので、早めに所在地のセンターの窓口を確かめておくと落ち着いて準備できます。流れの詳細は面接指導と費用負担の記事にあります。

付き合いのある専門職に頼むとき

顧問の医師、健康診断を頼んでいる医療機関、付き合いのある公認心理師。こうした相手に実施者を頼めれば、社員への説明もしやすくなります。確かめることは3つです。

  1. 資格と研修。看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師は、研修の修了が必要です。
  2. 人事の立場にないこと。社外の人なら通常は問題になりません。社内の人なら兼務を確かめます。
  3. 個人の結果をどこで保存するか。同意がない個人の結果は会社に渡らないので、実施者の側で保存します。

社会保険労務士は労務の相談相手として心強い存在ですが、資格だけでは実施者になれません。就業規則への反映や社内ルールの整備を相談し、実施者は別に立てる、という分け方になります。

ナナトリでの組み方

ナナトリでは、個人の57問の結果を見るのは本人と実施者だけです。実施者は、会社の産業医・公認心理師にアカウントを渡す(追加料金なし)か、当社が提携する公認心理師・産業医(別オプション)から選びます。会社の管理者が見られるのは、本人が共有を選んだ回と、面接指導を申し出た回の判定だけで、部署長には見えません。

法定の実施として使うのは、実施者と面接指導の医師を導入前に決めてからです。どちらも決まっていない会社は、決めるところから一緒に整理します。これから準備を始める会社は、全体の流れを義務化と準備の順番で、LINEで答える仕組みをLINEと9言語の記事で確かめてください。

出典(確認日 2026-09-25)

よくある質問

産業医を新しく選ばないと、2028年に間に合いませんか?

50人未満の事業場に産業医を選ぶ義務はないので、選ばなくても実施はできます。ストレスチェックは外部の機関の実施者に任せ、面接指導は地域産業保健センターの医師に頼む形が、厚生労働省のマニュアルが想定している基本の組み方です。

顧問の社会保険労務士に実施者を頼めますか?

社会保険労務士という資格だけでは実施者になれません。実施者は医師・保健師と、一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られています。労務の相談と実施者の役割は分けて考えてください。

社内に看護師がいます。実施者を任せられますか?

厚生労働大臣が定める研修を修了していれば実施者になれます。ただし、その看護師が人事に関する直接の権限を持つ立場(施設長や人事責任者など)を兼ねている場合は、実施者にも事務にも入れません。資格と立場の両方を確かめてください。

地域産業保健センターはどこにありますか?

全国に約350か所、おおむね労働基準監督署の単位で置かれています。労働者健康安全機構のページから、事業場の所在地を担当するセンターを探せます。予約の方法や利用の条件はセンターごとに違うので、2028年より前に一度電話で確かめておくと安心です。

ナナトリを使うと、実施者はどうなりますか?

医師・保健師、または研修を修了した公認心理師などで、人事に関する権限を持たない方に実施者になってもらい、その方にアカウントを渡します(アカウント発行に追加料金はかかりません)。付き合いのある専門職がいなければ、当社が提携する公認心理師・産業医を別オプションで選べます。

この記事のまとめ

  1. 50人未満の事業場に産業医の選任義務はない。ストレスチェックは外部の実施者、面接指導は地域産業保健センターの医師という組み方が基本。
  2. 実施者は医師・保健師と、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師。社長や人事部長は実施者にも事務にも入れない。
  3. 社内の担当者は日程の連絡と受検の呼びかけに徹し、個人の結果には触れない。役割の線引きを社員への説明の最初に置く。
無料相談(30分)電話する