50人未満のストレスチェック義務化、準備の順番

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。
2028年4月1日から、労働者が50人未満の事業場でもストレスチェックが義務になります。これまで「努力義務」だった小さな会社も、年1回の実施が必要です。準備で迷うところは、法律の文言よりも「うちは何人と数えるのか」「誰がやるのか」「何を残すのか」の3点です。厚生労働省が2026年2月に公表した小規模事業場向けのマニュアルに沿って、決める順番に並べました。
ストレスチェックとは、労働安全衛生法にもとづき、働く人に質問票に答えてもらい、ストレスの状態を本人に知らせる検査です。目的は精神疾患を見つけることではなく、不調の未然防止(一次予防)。本人が自分のストレスに気づき、高ストレスで面接指導が必要とされた人は申し出れば医師の面接指導を受けられ、会社は集団ごとの分析をもとに職場環境を直していきます。2015年から50人以上の事業場で義務、50人未満は努力義務でしたが、令和7年5月14日公布の改正法で規模にかかわらず義務になりました。
いつから、誰が対象になるのか
施行日は2028年(令和10年)4月1日です。改正法の公布時点では「公布後3年以内に政令で定める日」とされていましたが、厚生労働省の小規模事業場マニュアルに令和10年4月1日施行と明記されています。
対象は「事業場」です。会社全体ではありません。工場・事務所・店舗など、同じ場所にあるものを原則として1つの事業場と考え、同じ会社でも場所が離れていれば別の事業場になります。ただし、規模が著しく小さく独立して仕事をしていない出張所のような拠点は、上位の組織と一括して1つの事業場として扱われることがあります。迷う形は所轄の労働基準監督署に確かめてください。本社30人と支店20人の会社なら、2つの事業場がそれぞれ50人未満、という扱いです。
もう1つ、数え方で間違えやすいのがパートやアルバイトです。事業場が50人以上かどうかを判断するときは、週1回しか出勤しない人でも、継続して雇い、常態として働いてもらっているなら数に入れます(厚生労働省 ストレスチェック制度関係Q&A)。一方で「ストレスチェックを受けてもらう人」の範囲は別の基準で決まります。この2つを混ぜると、報告の要否も対象者の名簿もずれます。対象者の決め方は対象者の記事で詳しく書いています。
50人未満の事業場は、報告がいらない
50人以上の事業場は、実施のあと労働基準監督署へ報告書を出す義務があります。50人未満の事業場は、この報告が不要です(小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル)。
ただし、マニュアルには注意書きがあります。「受けてもらう人」が50人未満でも、先ほどの数え方で「常時使用している労働者」が50人以上になれば、報告が必要になる場合がある、というものです。パートの多い介護や飲食の事業所は、受検者の人数だけを見て判断しないでください。
報告は不要でも、記録を残す仕事は残ります。会社が受け取った集団分析の結果と、医師の面接指導の結果(意見書)は、会社で5年間保存します。個人の結果は、本人の同意なしには会社に渡らないため、外部に任せた場合は委託先の実施者の側で保存されます。
準備は、この順番で進める
マニュアルが想定しているのは、ストレスチェックと集団分析を外部の機関に任せ、社内には実務の担当者を1人置く形です。その前提で、決める順番を並べるとこうなります。
- 社内の実務担当者を決める。10人以上50人未満の事業場は、業種に応じて衛生推進者か安全衛生推進者を選ぶことになっているので、その人を中心にします。10人未満なら事業者自身が担う形も考えられます。
- 外部の実施者を選ぶ。調査票、結果の通知方法、料金の範囲(集団分析・面接指導・相談窓口がどこまで含まれるか)を比べます。
- 面接指導の依頼先を決める。50人未満の事業場は、地域産業保健センターに頼めば無料で受けられます。
- 社内のルールを書く。実施体制、実施方法、記録の保存、情報の扱い、不利益な取扱いの防止。マニュアル巻末にモデル規程があります。
- 社員に説明して、年1回の時期を決める。「個人の結果は本人の同意なく会社に渡らない」ことを最初に伝えます。

事業場の形ごとに、つまずく所は違う
同じ50人未満でも、事業場の形によって最初に確かめることが変わります。規模や業態ごとに、先に手を付ける所を分けておきます。
10人未満の事務所
衛生推進者を置く決まりがないため、社長自身が実務を担う形になりがちです。ただし社長は人事権を持つので、個人の結果に触れる事務はできません。外部の実施者に、回収から通知までを任せる前提で見積もりを取ります。
10人以上50人未満の事業所
衛生推進者(または安全衛生推進者)がいれば、その人が社内の窓口になります。人事部長を兼ねている場合は、個人の結果を扱う事務から外す必要があるので、役割の分け方を先に決めます。
拠点が複数ある会社
事業場ごとに人数を数えるので、本社は50人以上・支店は50人未満、と扱いが分かれることがあります。報告は50人以上の拠点だけ、実施は全拠点、と整理しておくと混乱しません。
パート・アルバイトの多い事業所
「数に入る人」と「受けてもらう人」がずれやすい形です。常時使用の人数では50人を超えるのに、受検者は40人、ということも起こります。名簿を2本に分けて作ります。
外国人スタッフのいる事業所
厚生労働省は職業性ストレス簡易調査票の翻訳版を公開しています。紙で配る場合でも、回答する言葉を選べるようにしておくと、回答の漏れを減らせます。
社長と人事部長は、実施の事務に入れない
小さな会社でいちばん引っかかるのがここです。ストレスチェックの実施者になれるのは、医師・保健師と、一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。そして人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある人(社長、人事部長など)は、実施者にも、個人の結果を扱う実施事務従事者にもなれません。
社員が10人の会社で、社長が質問票を配って回収し、結果に目を通す。これは制度の外です。回答する側も、社長が見ると思えば正直に書けません。外部の実施者に任せ、社内の担当者は日程の連絡や受検の呼びかけに徹する、という分担が基本になります。産業医のいない会社の組み方は産業医がいない会社の記事にまとめました。
会社が見られるもの、見られないもの
準備の説明会で、社員からいちばん聞かれるのは「会社に何が伝わるのか」です。マニュアルの整理をそのまま表にしました。
| 情報 | 会社が受け取れるか | 条件 |
|---|---|---|
| 個人のストレスチェック結果 | 本人が結果を見たあとに、会社への提供に同意したときだけ | 同意がなければ実施者側で保存 |
| 面接指導を申し出たこと | 受け取れる | 法令にもとづく事項 |
| 面接指導の結果・医師の意見 | 受け取れる | 会社で5年間保存 |
| 集団ごとの分析結果 | 受け取れる | 個人が特定されない形で |
受けないことや、結果を理由にした不利益な取扱い(配置・昇進・評価など)は禁止です。就業規則で受検を義務付けて、受けない人を懲戒処分にするような強要もしてはいけない、と厚生労働省のQ&Aは書いています。
ナナトリでできること、できないこと
ナナトリは、社員がLINEで答えるストレスチェックと職場アンケートのサービスです。国の57問(職業性ストレス簡易調査票)を使い、個人の結果は本人と実施者だけが見ます。実施者は、医師や研修を修了した公認心理師など人事権を持たない専門職で、会社の産業医・公認心理師にアカウントを渡すか、当社が提携する公認心理師・産業医(別オプション)から選びます。面接指導そのものは医師が行うもので、ナナトリの画面が代わりをするわけではありません。料金は費用の記事と料金表に載せています。
出典(確認日 2026-09-25)
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」 https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001678866.pdf
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルの公表について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
- 厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度関係Q&A」 https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/qa/
- e-Gov法令検索「令和7年法律第33号(労働安全衛生法等の改正)」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=507AC0000000033
よくある質問
2028年4月までに、最初に決めることは何ですか?
社内の実務担当者を1人決めることです。10人以上50人未満の事業場なら、衛生推進者または安全衛生推進者がいれば、その人が中心になると進めやすくなります。担当者が決まれば、外部の実施者探しと社内への説明を同時に進められます。
会社全体で60人いますが、拠点ごとには30人ずつです。報告は必要ですか?
事業場は原則として拠点ごとに数えるので、30人ずつなら労働基準監督署への報告は不要です。ただし2028年4月からは実施そのものは必要です。同じ建物に2つの部署がある場合は1つの事業場として数えるのが原則なので、場所ごとに人数を書き出して確かめてください。
努力義務の今のうちに、何か始めておくべきですか?
始めておくと、2028年に慌てずに済みます。1回目は手探りになりやすいので、義務化の前に1度やってみて、回答の集まり方や説明の仕方を確かめておく会社もあります。法律上の義務ではないため、社員への説明では任意であることを伝えてください。
罰則はありますか?
厚生労働省のQ&Aで罰則があると書かれているのは、50人以上の事業場が労働基準監督署への報告を出さなかった場合です。50人未満の事業場には、その報告の義務がありません。罰則の有無で判断せず、2028年4月からは実施そのものが義務になることを前提に準備してください。
社長が結果を見て、声をかけてもよいですか?
個人の結果は、本人の同意がなければ会社に渡りません。社長は人事に関する権限を持つ立場なので、実施の事務にも携われません。会社が受け取れるのは、集団ごとの分析結果や、面接指導を申し出たという事実などに限られます。
この記事のまとめ
- 施行は2028年(令和10年)4月1日。人数は会社全体ではなく事業場ごとに数え、週1回のパートも常態として働いていれば数に入る。
- 50人未満の事業場は労働基準監督署への報告は不要。ただし集団分析の結果や面接指導の結果は、会社で5年間保存する。
- 社長・人事部長など人事権を持つ人は実施の事務に入れない。外部の実施者に任せる範囲と、社内の実務担当者の仕事を先に分ける。


