カスハラ義務化は2026年10月から|会社がすること

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策と、就活生や実習生など求職者等へのセクハラ対策が、すべての事業主の義務になります。利用者やその家族と日々向き合う介護・医療の事業所にとっては、とくに身近な話です。厚生労働省のリーフレット(詳細版)をもとに、定義と、会社が講ずべき措置、先に決めておくことを整理しました。
カスタマーハラスメントとは、職場で行われる顧客等の言動のうち、社員が従事する業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えたものによって、社員の就業環境が害されるものを指し、①顧客等の言動、②社会通念上許容される範囲を超える、③就業環境が害される、の3つの要素をすべて満たすものです。電話やSNSなどのインターネット上の言動も含まれます。顧客等からの苦情のすべてがカスハラに当たるわけではありません。
いつから、誰が対象か
令和7年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)により、カスハラと求職者等へのセクハラの防止措置が事業主の義務になり、2026年(令和8年)10月1日に施行されます。指針は令和8年2月26日に公布されました(カスハラ=令和8年厚生労働省告示第51号)。
「顧客等」には、顧客や取引の相手方だけでなく、施設(病院・福祉施設など)の利用者とその家族、施設の近隣住民、今後サービスを使う可能性のある人も含まれます。
社会通念を超える言動の例
| 区分 | 例(厚生労働省のリーフレットから) |
|---|---|
| 要求の内容 | 理由のない要求、サービスと関係のない要求、契約で想定したサービスを著しく超える要求、対応が著しく困難・不可能な要求、不当な損害賠償の要求 |
| 手段や態様 | 身体的な攻撃、精神的な攻撃(脅迫・中傷・侮辱・暴言・土下座の強要など)、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、拘束的な言動(居座り・監禁など) |
内容と手段のどちらか一方だけが範囲を超える場合でも当たり得ます。判断は、言動の目的や経緯、業種、頻度、社員の心身の状況などを総合的に見て行います。障害のある人が、会社に対して不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要とする意思を示すこと自体は、カスハラに当たりません。

会社が講ずべき10の措置
- カスハラには毅然とした態度で対応し、社員を守る方針を明確にして周知・啓発する。
- カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処(上司に指示を仰ぐ、できる限り一人で対応させない、犯罪に当たり得る言動は警察へ通報する、本社・本部へ情報を共有するなど)を周知する。
- 相談窓口をあらかじめ定めて周知する。
- 相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする。
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する。
- 被害を受けた社員への配慮の措置を適正に行う。
- 再発防止の措置を講ずる。
- とくに悪質なカスハラへの対処の方針を定めて周知し、対処できる体制を整える。
- 相談者などのプライバシーを守る措置を講じて周知する。
- 相談したことなどを理由に不利益な取扱いをしないことを定め、周知・啓発する。
職場の形ごとに、先に決めること
介護施設・有料老人ホーム
利用者の家族からの要求や、面会時の言動が主な場面です。職員が一人で抱えないよう、施設長や相談員に引き継ぐ順番を決めておきます。
訪問介護・訪問看護
利用者の自宅で一人になる時間が長い仕事です。「可能な限り一人で対応させない」が難しいぶん、連絡の手順と、同行や担当替えの判断基準を先に決めます。
病院・クリニック
待ち時間や説明への不満が強い言動につながることがあります。受付・看護・医師のどこで誰が引き取るかを決めておきます。
看護実習や介護実習を受け入れる事業所
実習生は求職者等へのセクハラの対象に含まれます。指導担当の社員向けに、実習中の言動の注意を周知します。
電話・SNSの窓口がある会社
電話やSNSでの言動もカスハラに含まれます。長時間の電話を切り上げる基準や、記録の残し方を決めます。
求職者等へのセクハラ対策も同じ日から
同じ2026年10月1日から、社員の性的な言動によって求職者等の求職活動が妨げられることを防ぐ措置も義務になります。求職者等には、応募者だけでなく、会社の採用活動に参加する人や、教育実習・看護実習などの実習生も含まれます。採用面接、説明会、社員への訪問、インターンシップ、実習の場面で、オンラインやSNSでのものも含みます。職場のセクハラ対策とあわせて、セクハラ防止の記事にまとめています。
ナナトリで手伝えること
ナナトリの職場アンケートには、ハラスメントについての問いがあります。会議用のまとめでは答えが名前なしの数字で部署ごとに出るので(任意アンケートの答えそのものは管理者に社員ごとに見えます)、「どの職種が、どんな場面で困っているか」を方針や対処を決める前に集められます。社員はLINEから相談を申し込め、会社は日程の段取りだけを受け持ちます。ただし、ナナトリが法律上の相談窓口そのものを代わりに引き受けるわけではありません。窓口の担当者を決め、対応できるようにするのは会社の措置です。窓口の置き方は相談窓口の記事、職場アンケートでの調べ方はハラスメントのアンケートの記事、パワハラの措置はパワハラ防止法の記事にあります。
出典(確認日 2026-09-25)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
- 厚生労働省 リーフレット(詳細版)「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf
- 厚生労働省 リーフレット(簡易版) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf
よくある質問
カスハラ対策の義務化は、いつからですか?
2026年(令和8年)10月1日からです。同じ日から、就活生や実習生など求職者等へのセクハラの防止措置も義務になります。施行の前日までに、方針・対処の内容・相談窓口の3つを社員に知らせておくと、当日から慌てずに済みます。
小さな会社も対象ですか?
事業主の雇用管理上の措置の義務なので、会社の規模にかかわらず対象です。パワハラ防止措置のような中小企業の猶予期間は、厚生労働省のリーフレットには書かれていません。
利用者の家族からの強い要求も、カスハラになりますか?
顧客等には、福祉施設や病院などの施設の利用者とその家族も含まれます。ただし苦情のすべてがカスハラではなく、要求の内容や手段・態様が社会通念上許容される範囲を超え、職員の就業環境が害される場合に当たります。個別の判断は、経緯や状況を総合的に見て行います。
就業規則に書く必要はありますか?
厚生労働省の資料では、方針を明確にして社員に周知・啓発することが求められています。就業規則への規定は周知の方法の1つとして考えられますが、書き方や規定の要否は社労士と確かめてください。
求職者等へのセクハラとは、どんな場面ですか?
採用面接、会社説明会、社員への訪問、インターンシップ、教育実習や看護実習などの場面で、社員の性的な言動によって求職活動が妨げられることです。オンラインやSNSでのものも含まれます。
罰則はありますか?
厚生労働省のリーフレットには、罰則についての記載は見当たりませんでした。ほかのハラスメントと同じく、行政からの助言・指導・勧告などの対象になることが考えられるため、詳しくは都道府県労働局に確かめてください。
この記事のまとめ
- 2026年10月1日から、カスハラと求職者等へのセクハラの防止措置が全事業主の義務。顧客等には福祉施設・病院の利用者と家族も含む。
- 講ずべき措置は10項目:方針の明確化と対処の周知、相談窓口、事実確認・被害者への配慮・再発防止、悪質な場合の対処の方針と体制、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止。
- 介護・医療は、一人で対応させない・上司に指示を仰ぐなどの対処を職種ごとに決め、看護実習などの実習生への対応も含めて周知する。


