パワハラ防止法の義務|中小企業の10の措置

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。
「パワハラ防止法」と呼ばれる労働施策総合推進法の措置は、中小企業も2022年4月1日から義務になっています。方針を作り、相談窓口を置いたものの、社員に届いているか分からない。そんな会社のために、会社が必ず講じる10の措置を厚生労働省のリーフレットで整理しました。
職場のパワーハラスメントとは、職場で行われる、①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③社員の就業環境が害されるもの、の3つの要素をすべて満たす行為です。客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務の指示や指導は、パワハラに当たりません。事業主には、パワハラを防ぐための雇用管理上の措置が義務づけられています。
会社が必ず講じる10の措置
| 柱 | 措置 |
|---|---|
| 方針の明確化と周知・啓発 | ①パワハラの内容と、してはならない方針を明確にして周知 ②行為者に厳正に対処する方針と内容を就業規則などに規定して周知 |
| 相談に応じる体制 | ③相談窓口をあらかじめ定めて周知 ④担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする |
| 事後の迅速・適切な対応 | ⑤事実関係を迅速・正確に確認 ⑥被害者への配慮の措置 ⑦行為者への措置 ⑧再発防止(事実確認ができなかった場合も含む) |
| 併せて講ずべき措置 | ⑨相談者・行為者のプライバシーを守る措置と周知 ⑩相談したことなどを理由に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知 |

小さな会社でつまずきやすい所
- 社長が行為者になり得る。相談窓口の担当者が社長に近いと、社員は相談しにくくなります。社外の窓口を並べる選択肢を考えます(相談窓口の記事)。
- 就業規則に書いていない。行為者への対処の方針は、就業規則などの文書に規定することが措置に含まれます。
- 事実確認のやり方が決まっていない。相談者と行為者の双方から、心身の状況にも配慮しながら丁寧に確かめることが大切です。
望ましい取り組みも、あわせて
リーフレットには、義務ではないものの望ましい取り組みも並んでいます。パワハラ・セクハラ・妊娠出産等のハラスメントをまとめて相談できる体制、原因となる要因をなくす取り組み(コミュニケーションの研修や適正な業務目標)、就活生や実習生、フリーランスなどへの方針の明示、カスハラへの相談体制や一人で対応させない工夫などです。就活生や実習生など求職者等へのセクハラ防止と、カスハラ対策は、2026年10月1日から望ましい取組ではなく義務になります。カスハラ義務化の記事もあわせて確かめてください。
措置が届いているかを、職場で確かめる
方針や窓口を作っても、社員が知らなければ相談は来ません。ナナトリの職場アンケートにはハラスメントについての問いがあり、会議用のまとめでは答えが名前なしの数字で部署ごとに出ます(任意アンケートの答えそのものは管理者に社員ごとに見えます)。窓口の認知や、困りごとがどの部署に偏っているかを確かめ、会議で次の手を決める材料にしてください。調べ方はハラスメントのアンケートの記事、パワハラに当たるかの考え方は6類型とグレーゾーンの記事にまとめました。
出典(確認日 2026-09-25)
- 厚生労働省「中小企業の事業主の皆さま 『パワーハラスメント防止措置』が中小企業の事業主にも義務化されます!」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
よくある質問
中小企業のパワハラ防止措置は、いつから義務ですか?
2022年(令和4年)4月1日からです。それまでは努力義務でした。大企業は2020年6月1日から義務になっています。
パワハラかどうかは、どう判断しますか?
優越的な関係を背景とした言動であること、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること、社員の就業環境が害されること、の3つの要素をすべて満たすものがパワハラです。客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示や指導は当たりません。
相談窓口は、社内に置かないといけませんか?
相談窓口をあらかじめ定めて社員に知らせることが措置の1つです。社内の担当者のほか、社外の機関に委託する形も考えられます。どちらの場合も、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにしておく必要があります。
相談した社員を、評価で不利に扱ってはいけませんか?
相談したことなどを理由に解雇その他の不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。その旨を定めて社員に知らせることも、措置の1つです。
事実が確認できなかった場合も、何かする必要がありますか?
再発防止に向けた措置は、事実確認ができなかった場合も含めて講じることが求められています。方針の周知をやり直す、研修を行うなど、職場全体への働きかけを考えます。
この記事のまとめ
- 中小企業も2022年4月1日から義務。パワハラ=優越的な関係・業務上必要かつ相当な範囲を超える・就業環境を害する、の3要素すべて。
- 10の措置=方針の明確化と就業規則等への規定、相談窓口と担当者、事実確認・被害者への配慮・行為者への措置・再発防止、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止。
- 措置を作ったあと、窓口が知られているか、困りごとがどこにあるかを職場アンケートで確かめる。


