離職と定着Guide

採用費を増やす前に、自社の離職率と定着を見る

公開 2026.09.25更新 2026.09.25読了 約10分
夕方の会議室で、入社と退職の記録を並べて話し合う経営者と人事担当者
採る力より、残る理由。
Editor

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。

求人を出しても応募が来ない。やっと採った人が半年で辞める。そこで求人の費用を増やす。中小企業の経営者なら一度は通る道です。けれど1年で半分が辞める職場では、求人費を倍にしても、残る人の数は思ったほど増えません。採用費を増やす前に、自社の離職率と、辞めていく時期と理由を見る。この記事は、その順番を具体的な手順にしたものです。

離職率とは、一定の期間に辞めた人の数を、期間の初めに在籍していた人の数で割った割合です。厚生労働省の雇用動向調査は、1年間の離職者数を1月1日時点の常用労働者数で割って出しています。令和7年(2025年)の全国の離職率は13.7%、入職率は14.7%でした。自社で出すときは、分母と期間の決め方を毎年そろえることが条件で、そろっていれば去年との比較や部署ごとの比較に使えます。

採った人数ではなく、残った人数で割る

マイナビの中途採用状況調査2025年版によると、2024年の中途採用は1社平均20.8人、採用にかけた費用は平均650.6万円でした。単純に割ると、1人あたり約31万円です。

ここで、同じ費用を「1年後に残っていた人数」で割ってみます。次の数字は説明のための計算例です。

計算例会社A会社B
1年間の求人費300万円300万円
採用した人数10人10人
1年後に残った人数8人4人
1年残った人あたりの採用費37.5万円75万円

求人費も採用人数も同じなのに、1年残った人あたりの負担は倍になります。会社Bが求人費を600万円に増やしても、定着が同じなら残るのは8人です。会社Bに要るのは、先に「なぜ6人が1年もたずに辞めたのか」を知ることです。欠員の間の残業や、教える側の負担まで入れた金額の出し方は、離職コストの記事にまとめました。

採用費と1年後に残った人数を書き込んだ表をペンで指し示す手元
採用費は「採った人数」ではなく「1年残った人数」で割ると、定着の問題が数字に出ます。

小さな会社ほど、新卒の3年以内離職は高い

厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者の就職後3年以内の離職率を、事業所の規模別に見ると差がはっきりします。

事業所の規模高校卒大学卒
5人未満63.2%57.5%
5〜29人54.6%52.0%
30〜99人45.2%41.9%
100〜499人36.7%33.9%
1,000人以上26.3%27.0%

30人未満の事業所では、新卒で入った人の半分以上が3年以内に辞めています。これは新卒の数字で、中途採用や介護職全体の数字ではありません。ただ、規模が小さいほど1人の退職の重さは大きく、採用に回せる予算も限られます。若手の定着については若手社員の記事で掘り下げています。

辞め方の種類ごとに、打ち手は違う

「離職率を下げる」とひとまとめにすると、打ち手がぼやけます。辞め方を種類で分けると、どこに手を入れるかが決まります。

入社から3か月以内に辞める

求人で伝えた仕事と、入ってからの仕事が違っていた可能性が高い形です。求人票の書き方、面接で見せる職場、最初の1か月の教え方を見直します。採用経路ごとに差が出やすいので、採用経路別の定着も合わせて見てください。

1年以内に辞める

仕事を覚えた頃に、評価や人間関係、勤務の組み方への不満が出てくる時期です。3か月ごとに短いアンケートを取っていれば、答えの変化が話し合いのきっかけになります。

中堅が辞める

仕事を任されている人ほど、辞めたときの影響は大きくなります。理由は給与・任され方・人間関係・家庭の事情が重なることが多く、上司の推測で1つに決めつけると次の人も同じ理由で辞めます。本人の話と記録で確かめる聞き方は中堅社員の記事に書いています。

同じ上司の部署から続けて辞める

部署ごとの数字を並べると見えてくる形です。個人を責める材料にするのではなく、その部署の人数・業務量・上司の負担を会議で確かめます。

家庭の事情で辞める

介護や子育てとの両立が理由の退職は、勤務の組み方で防げる場合があります。退職時に理由を選んでもらう質問に、両立の項目を入れておくと把握しやすくなります。

経営者として、自分の甘さが裏目に出た

ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINEの代表、吉村は、関連会社の株式会社3SMILEで介護の施設を立ち上げてきました。介護業界に未経験から入ったとき、周りからは「採用に苦労する」「すぐ辞める」と口をそろえて言われたといいます。1つ目の施設では、関連会社3SMILEの実績として3か月で100件の応募がありました。

それでも、施設が増えるにつれて組織の力が問われるようになりました。吉村が振り返って挙げるのは、「自分の甘さや優しさが裏目に出た」「なんとなく、まあまあ、これくらい、が会社を崩す」ということです。感覚で人を見ていると、辞めていく理由も感覚でしか語れません。3つ目の施設の頃から、数字を毎日見られる仕組みとシステムの導入に踏み出しました。ナナトリは、その現場で使いながら作っているサービスです。

会議で「誰が・いつまでに・何をするか」まで決める

数字を集めても、会議で決めなければ何も変わりません。月に1度、30分でも、次の順番で話すと決めることがはっきりします。

  1. 人の出入り。先月の入社・退職の件数、辞めた人の勤続と部署。
  2. 入社のきっかけ別の定着。どの求人媒体や紹介から入った人が1年続いているか。
  3. 部署ごとの職場の状態。同僚・上司・会社・職場環境についての答え。人数が少ない部署は傾向として読む。
  4. 面談と相談。面談候補の人数、実施した面談、相談につないだ件数。
  5. 決めたこと。担当者、期限、次の会議で何を見て確かめるか。

ナナトリの「会議用のまとめ」は、この5つを名前なしの数字で出します。見られるのは会社の管理者だけで、部署長の画面には出ません。関連会社3SMILEでの使い方は導入事例に載せています。

出典(確認日 2026-09-25)

よくある質問

離職率は何パーセントなら高いのですか?

業種や規模で大きく違うので、全国の数字と比べて高い低いを決めるのはおすすめしません。厚生労働省の令和7年雇用動向調査では離職率は13.7%でしたが、これは全産業の平均です。比べる相手は、自社の去年と、自社の中の部署や採用経路の違いにしてください。

採用費を減らせば、会社の経費は下がりますか?

求人の出稿を減らせば一時的には下がりますが、辞める人が多いままだと欠員が埋まらず、残った社員の残業や疲れが増えます。先に辞め方の種類と時期を見て、どこで人が抜けているかが分かってから、採用費をどこに使うか決める方が無駄が出にくくなります。

アンケートを取れば離職は減りますか?

アンケートだけで離職が減るわけではありません。役に立つのは、答えをもとに会議で「誰が、いつまでに、何をするか」を決め、次の回で変化を見るところまで回したときです。取りっぱなしにすると、社員は答えても何も変わらないと感じ、回答が減っていきます。

小さな会社で、辞めた理由を聞き出すのは難しくありませんか?

退職の面談で本音を聞くのは、規模にかかわらず難しいものです。上司ではない人が聞く、退職が決まったあとに短い質問を送る、辞める前の時期の回答と並べて見る、といった工夫で、推測だけに頼らずに済みます。

どこから手を付ければよいですか?

過去1年に入社した人と辞めた人の一覧を作り、入社日・退職日・部署・入社のきっかけを並べることからです。これだけで、入社から何か月で辞めているか、どの経路で入った人が残っているかが見えます。数字の整理の仕方は離職コストの記事にも書いています。

この記事のまとめ

  1. 採用費は「採った人数」ではなく「1年残った人数」で割って見る。定着が悪いと、同じ求人費でも1人あたりの負担は大きくなる。
  2. 辞め方は、入社直後・1年以内・中堅・管理職との関係・家庭の事情など種類で分けて見る。種類ごとに打ち手が違う。
  3. アンケートは会議で担当と期限を決め、次の回で変化を見るところまで回して初めて役に立つ。
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