離職と定着

採用経路別の定着率を正しく比べる

公開 2026.09.25更新 2026.09.25読了 約7分
求人媒体ごとの採用記録を並べたノートを見比べる採用担当者
応募の数より、1年後の顔ぶれ。
Editor

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。

求人を複数の媒体に出していると、「どこから応募が多いか」はすぐに分かります。けれど、どこから入った人が1年後も働いているかを数えている会社は多くありません。採用経路ごとの定着を正しく出すと、求人費の使い道を決める材料が1つ増えます。出し方と、数字を読み違えないための注意です。

採用経路別の定着率とは、求人媒体・ハローワーク・人材紹介・社員の紹介など、入社のきっかけごとに、ある時点まで働き続けた人の割合です。ここでは「同じ期間に入社し、入社から1年の時点を迎えた人」を分母に、「1年の時点で在籍している人」を分子にします。経路ごとの採用人数が少ないと割合は大きく揺れるため、割合と一緒に人数を必ず示すことが、比べるときの前提になります。

分母と観測期間をそろえる

定着率を出すときにいちばん起こりやすいのが、分母の混ぜ方の間違いです。

入社月と採用経路ごとに、1年後の在籍に印をつけた一覧表
同じ時期に入った人だけを並べ、1年たった時点で残っているかを数えます。

表は、人数と割合を並べる

経路ごとに4つの列を並べます。空欄の表をそのまま使えます。

入社のきっかけ採用人数1年後の在籍観測した期間
求人媒体A
求人媒体B
ハローワーク
人材紹介
社員の紹介

割合は「1年後の在籍÷採用人数」です。ここに、その経路にかけた費用を横に足せば、1年残った人あたりの採用費も出せます。

少人数で比べるときの注意

中小企業では、1つの経路から1年に2人か3人しか採っていないことも多いはずです。3人のうち1人が辞めれば、定着率は約33ポイント動きます。人数の少ない経路どうしの差で、媒体の良し悪しを決めないでください。

読み方は3つあります。2年分・3年分を合わせて人数を増やす。割合ではなく「3人中2人」と実数で書く。差が大きくても、会議では傾向として扱い、次の1年で確かめる。また、経路だけで原因は決まりません。同じ媒体から入った人が同じ部署に配属されていれば、辞める理由は部署の側にあるかもしれません。

退職のときに、3つだけ聞く

定着率は「何人残ったか」を教えてくれますが、「なぜ辞めたか」は教えてくれません。そこで退職が決まった人に、短い質問を3つだけ送ります。ナナトリでは退職日の朝に「退職時の3問」を1通だけ送り、その後は配信しません。

答えは入社のきっかけと並べて見ます。ある媒体から入った人が「入社前に聞いていた仕事と違った」と答えることが多ければ、その媒体の求人票の書き方を見直す、という具体的な手が出てきます。

会議でどう使うか

年に1度、求人の予算を決める前の会議で、この表を出します。確かめることは次の順番です。

  1. 経路ごとの採用人数と、1年後の在籍(人数を併記)。
  2. 経路ごとの費用と、1年残った人あたりの費用。
  3. 退職時の3問の答えのうち、経路ごとに目立つもの。
  4. 来年、費用を増やす経路・減らす経路・求人票を直す経路。

ナナトリの会議用のまとめには、入社のきっかけ別に1年続いた人の数と、退職時の3問が出ます。住まいの地域の分布も並ぶので、求人の出し先を考える材料にもなります。離職の費用の整理は離職コストの記事、若手の定着は若手社員の記事で書いています。

出典・参考(確認日 2026-09-25)

よくある質問

応募数が多い媒体を優先すればよいのではありませんか?

応募数は入口の数で、定着とは別の話です。応募が多くても1年以内に辞める人が多ければ、1年残った人あたりの費用は高くなります。応募数・採用数・1年後の在籍の3つを同じ表に並べてから判断してください。

入社して1年たっていない人は、どう扱いますか?

分母に入れません。まだ1年の時点に達していない人を入れると、定着率が実際より高く見えます。同じ期間に入社し、1年の時点を迎えた人だけで数え、1年に満たない人は別に件数だけを書いておきます。

採用人数が3人の媒体と30人の媒体を、同じ割合で比べてよいですか?

そのまま比べると判断を誤ります。3人のうち1人辞めれば定着率は33ポイント動きます。人数を必ず横に書き、少ない経路は複数年を合わせるか、傾向として読むにとどめてください。

紹介で入った人が長く続くのはなぜですか?

自社の記録で確かめるまでは、理由は分かりません。紹介者から職場の様子を聞いてから入るので入社前後のずれが小さい、という説明はよく聞かれますが、自社でそうなっているかは、退職時の質問や短いアンケートの答えと並べて見る必要があります。

退職した人に、入社のきっかけを後から聞いてもよいですか?

入社時の記録に残っていれば、それを使うのが確実です。後から聞くと記憶があいまいになりやすいので、これから入る人については、入社の手続きのときに「どこで知ったか」を記録しておく運用に切り替えてください。

この記事のまとめ

  1. 入社のきっかけ別の定着率は、同じ期間に入り1年の時点を迎えた人を分母に、1年後に在籍している人を分子にして出す。
  2. 人数を必ず横に書く。少ない経路は1人で大きく動くので、複数年を合わせるか傾向として読む。
  3. 応募数・採用数・1年後の在籍・費用を同じ表に並べ、求人費をどこに使うかを会議で決める。
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