若手社員の定着を話し合う職場アンケート

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。
「最近の若い人はすぐ辞める」。そう言いたくなる気持ちは分かります。ただ、厚生労働省の数字を規模別に見ると、同じ新卒でも辞める割合は職場の大きさでかなり違います。若手の離職を世代のせいにすると、自社で直せる所が見えなくなります。入社してからの認識のずれを、話し合える材料にする方法を書きます。
若手社員の定着とは、入社した若い社員が、仕事を覚えて一人前になる時期まで働き続けることです。厚生労働省は新規学卒者の就職後3年以内の離職率を毎年公表しており、令和4年3月卒業者では高校卒37.9%、大学卒33.8%でした。定着を考えるときは、この全国の数字を自社の目標にするのではなく、入社からの月数ごとに自社で何が起きているかを記録して見ることが出発点になります。
規模が小さいほど、3年以内の離職は高い
| 事業所の規模 | 高校卒 | 大学卒 |
|---|---|---|
| 5〜29人 | 54.6% | 52.0% |
| 30〜99人 | 45.2% | 41.9% |
| 100〜499人 | 36.7% | 33.9% |
| 1,000人以上 | 26.3% | 27.0% |
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」事業所規模別の就職後3年以内離職率。
この規模別の数字を踏まえ、自社では入社後のどの時期に退職が起きているかを確かめます。統計から「なぜ辞めたか」までは分かりません。分かるのは、同じ世代でも職場の条件で結果が変わっているということです。教える人の余裕、相談できる相手、配属の決め方。小さな職場ほど、1人の上司や1つの出来事の影響が大きくなります。

ずれは、決まった時期に生まれる
若手の気持ちが離れていくのは、ある日突然ではありません。入社前に思っていた仕事と、実際の仕事との間のずれが、いくつかの時期に表に出てきます。
- 入社から1か月。仕事の中身、勤務の組み方、職場の雰囲気が求人や面接の印象と違う。
- 配属・独り立ちの頃。教えてくれた先輩から離れ、1人で判断する場面が増える。
- 半年から1年。評価や給与、次に任される仕事が見えてくる。
この時期ごとに同じ短い質問をすると、答えが変わった所が分かります。変わった所が、話を聞くきっかけです。
短いアンケートで聞くこと
質問は多いほどよいわけではありません。スマホで5分ほどで答えられる量にして、3か月ごとに繰り返す方が、変化をとらえられます。ナナトリの短い回では、体調、職場、周りとの関わり方をたずねています。若手向けに見るなら、次のような問いが手がかりになります。
- 困ったときに相談できる人がいるか
- 仕事の進め方を、自分で決められる場面があるか
- 入社前に聞いていた仕事と、今の仕事は近いか
- 休みは取れているか、体調はどうか
答えは、本人を評価する材料には使いません。答えを理由にした不利益な扱いをしないことを最初に伝えないと、正直な答えは返ってきません。
面談は、上司以外の人も入れる
上司との面談は大切ですが、若手ほど評価を気にして本音を言いにくいものです。人事総務の担当者や、別の部署の先輩など、評価に関わらない人が聞く場を1つ用意すると、話が出てきやすくなります。
ナナトリでは、任意アンケートの数字が決まった条件に当てはまった人を「面談候補」として管理者に知らせます。LINEの知らせには名前を書きませんが、管理者の画面では面談候補の人を確認できます。これは診断や判定ではなく、話を聞くきっかけです。社員がカウンセリングを申し込んだ場合、会社は日程の段取りだけを受け持ち、相談の中身は聞きません。
会議では、若手の数字を別に見る
月に1度の会議で、入社1年未満の人の数字を別に並べます。入社からの月数ごとの退職、入社のきっかけごとの定着、若手が多い部署の職場の状態。人数が少ない部署は1人の答えで数字が大きく動くので、傾向として読むか、近い部署とまとめて見ます。
見るべき数字の全体像は採用費と定着の記事、採用経路ごとの比べ方は採用経路別の定着、若手の次に辞めやすい中堅の話は中堅社員の記事に書いています。
出典(確認日 2026-09-25)
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001580844.pdf
- 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」(事業所規模別・産業別) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
よくある質問
若手が辞めるのは、今の世代の特徴ではないのですか?
世代の特徴として片付けると、自社で直せることが見えなくなります。厚生労働省の数字を見ても、同じ新卒でも事業所の規模によって3年以内の離職率に大きな差があります。職場の側の条件が効いている部分がある、と考えて手を付ける方が打ち手が出てきます。
面談をしているのに、辞める直前まで気づけません。
上司との面談では、評価に響くと思って本音を言いにくいものです。上司ではない人が聞く、答えを名前なしで集計して見る、同じ質問を時期を変えて繰り返す、といった形を組み合わせると、変化に気づくきっかけが増えます。
アンケートの答えで、辞めそうな人を見つけられますか?
アンケートは辞める人を当てるための道具ではありません。答えから分かるのは、職場のどこに困りごとがありそうか、という傾向です。数字が気になる人がいたら、話を聞くきっかけとして使い、判定や評価には使わないでください。
新卒ではなく中途採用の若手も同じですか?
厚生労働省の3年以内離職率は新規学卒者の数字なので、中途採用の若手にそのまま当てはめることはできません。ただ、入社直後に仕事の中身と期待がずれやすい点は共通しています。入社の経路と時期で分けて、自社の記録を見てください。
何人くらいから、部署ごとの数字を見てよいですか?
人数が少ないと、1人の答えで数字が大きく動き、誰の答えかも推測されやすくなります。ナナトリの57問の集団の数字は10人以上の集団から出し、10人未満の部署は単独では出しません。まとめ方は実施者と決めてください。
この記事のまとめ
- 新卒の3年以内離職率は、事業所の規模が小さいほど高い(令和4年3月卒・5〜29人で高卒54.6%、大卒52.0%)。
- 若手の離職理由を世代や本人の性格で決めつけず、入社直後・配属後・半年後の認識のずれを短い質問で集める。
- アンケートは辞める人を当てる道具ではない。話を聞くきっかけとして使い、会議で担当と期限を決める。


