離職と定着

中堅社員が辞める理由を決めつけない

公開 2026.09.25更新 2026.09.25読了 約8分
夕方の窓辺で、ノートを前に考え込む中堅社員の横顔
推測で閉じた理由は、次の人も連れていく。
Editor

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。

仕事を任せていた中堅社員から退職を切り出される。引き継ぎ、取引先への説明、残った人の負担。影響は大きいのに、退職の理由は「給料だろう」「家庭の事情らしい」と、上司の推測で記録されがちです。推測で閉じた理由は、同じ条件の次の人も連れていきます。本人が話せる聞き方と、会社が見てよい数字の範囲を整理します。

中堅社員とは、入社から数年がたち、仕事を1人で回せるようになり、後輩を教えたり現場の判断を任されたりしている社員を指します。辞める理由は、任される仕事と給与・裁量の釣り合い、上司や同僚との関係、家庭の事情との両立など複数が重なることが多く、1つに決めつけると打ち手を外します。会社が理由をつかむには、個人を特定する材料ではなく、部署ごとの傾向として集めた声を会議で扱うことが前提です。

理由を決めつけると、何が起きるか

「あの人は給料で辞めた」と記録すると、会社の打ち手は給与の見直しだけになります。本当の理由が、上司との関係や、後輩の指導ばかりで自分の仕事が進まないことだったとしたら、給与を上げても次の中堅が同じ理由で辞めます。

もう1つの問題は、残った社員への影響です。辞めた人の理由が推測で語られていると、「本当のことを言っても伝わらない」と感じ、職場の困りごとが表に出にくくなります。

部署ごとの職場の答えを、名前なしの数字で並べた会議資料
会議に出すのは部署ごとの集計です。個人の答えを探す資料ではありません。

本人が話せる聞き方

どの聞き方でも、答えを理由に不利益な扱いをしないことを先に伝えます。辞める人の答えは、残る人の働き方を直すために使う、と目的を言葉にしておくと、答えが返ってきやすくなります。

57問の結果・任意アンケート・会議用のまとめは、見る人が違う

職場アンケートを始めるとき、社員がいちばん気にするのは「誰に何が見えるか」です。ナナトリでの見え方を表にしました。

データ見られる人補足
57問の個人の結果本人と実施者会社は本人が共有を選んだ回と、面接指導を申し出た回の判定だけ。部署長には見えない
任意アンケートの答え本人と会社の管理者部署長は自部署の分だけ
会議用のまとめ会社の管理者名前は出さず、人数や件数で示す

任意アンケートの答えは、会社の管理者には社員ごとに見えます。社員への説明ではこの点をぼかさずに伝え、会議には名前なしのまとめだけを出す、と運用で分けてください。国の57問の個人の結果は、法律上、本人の同意なしには会社に渡りません。面接指導を申し出た事実や、その結果・医師の意見は、法令にもとづいて会社が受け取れます。この線引きを守ることが、正直な答えの前提になります。

少人数の部署は、傾向として読む

中小企業では、5人や6人の部署も珍しくありません。人数が少ないと、1人の答えで数字が大きく動き、誰の答えか推測されやすくなります。

会議のルールとして、人数を必ず横に書く、近い部署とまとめて見る、少人数の部署の数字を個人の話に結びつけない、の3つを決めておきます。国の57問の集団の数字は、ナナトリでは10人以上の集団から出します。

AIの会議メモは、下書きとして使う

ナナトリの会議用のまとめには、AIの会議メモが付きます。AIに渡すのは10人以上の集計だけで、個人の答えや名前は渡しません。AIが出すのは会議の議題と、「誰が・いつまでに・何をするか」の案です。

案は下書きで、決めるのは会議に出ている人です。前の会議で決めたことが実施されたかを、面談や相談につないだ件数と合わせて確かめ、次の回の答えで職場の変化を見ます。数字は退職を予測するためのものではなく、職場のどこに手を入れるかを決めるためのものです。

辞め方の種類ごとの打ち手は採用費と定着の記事、若手の定着は若手社員の記事、職場全体の健康づくりとしての取り組みは健康経営の記事で書いています。

出典(確認日 2026-09-25)

よくある質問

退職の面談で「一身上の都合」としか言ってもらえません。

退職が決まった場で、上司に本当の理由を話すのは難しいものです。上司ではない人が聞く、退職日に短い質問を送る、それまでの回の答えと並べて見る、といった形で、1回の面談だけに頼らずに理由を集めてください。

部署長に、自分の部署の結果を見せてもよいですか?

ナナトリでは、57問の個人の結果は部署長には見えません。任意アンケートの答えは、部署長は自部署の分だけ見られる設定です。何を誰に見せるかは導入の前に決め、社員への説明にも同じ内容を書いてください。

AIの会議メモは、社員の個人の答えを読んでいるのですか?

AIに渡すのは10人以上の集計だけです。個人の答えや名前は渡しません。AIが出すのは会議の議題の案と、誰がいつまでに何をするかの案で、決めるのは会議に出ている人です。

少人数の部署で、答えた人が特定されないか心配です。

人数が少ないと、答えの傾向から誰の答えかを推測されやすくなります。人数を横に書いて傾向として読む、近い部署とまとめて見る、少人数の部署の数字を個人の話に結びつけない、の3つを会議のルールにしてください。

辞めそうな中堅を、数字で見つけて引き止めたいのですが。

数字は退職を予測するものではありませんし、引き止めの材料にすると社員は正直に答えなくなります。数字から分かるのは、どの部署で何が困りごとになっていそうかという傾向です。個人への声かけは、本人が話したいと思える形で行ってください。

この記事のまとめ

  1. 中堅の退職理由を上司の推測で記録しない。評価に関わらない人が聞く、退職日に短い質問を送るなど、話せる場を複数つくる。
  2. 57問の個人の結果、任意アンケートの答え、会議用のまとめは見られる人が違う。会議で扱うのは名前なしのまとめで、少人数の部署は傾向として読む。
  3. アンケートや数字は退職の予測や引き止めに使わない。会議で担当と期限を決め、次の回で変化を確かめる。
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