中小企業の健康経営とアンケート運用

ナナトリ編集部が、ナナトリを運営する株式会社SECRET MEDICINE 代表取締役 吉村 貴成の知見をもとに作成しました。関連会社(株式会社3SMILE・介護と看護の事業所)で採用と定着に向き合ってきた経営者の立場からの記事です。制度の記述は厚生労働省などの一次資料で確かめています(確認日 2026-09-25)。
健康経営という言葉は知っていても、「うちの規模で何をすればいいのか」で止まっている中小企業は多いはずです。認定のための書類から入ると、社員にとっては仕事が増えるだけになりがちです。出発点は、社員の健康課題を把握すること。職場の声を集めて、会議で直し、次の回で確かめる。その回し方を、厚生労働省の数字とあわせて書きます。
健康経営とは、社員の健康づくりを経営の課題としてとらえ、費用や時間を投じて計画的に取り組むことです。健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が制度を設計し、日本健康会議が認定する制度で、大規模法人部門と中小規模法人部門があります。認定を目指すかどうかにかかわらず、中身は、健康課題を把握する、手を打つ、効果を確かめる、の繰り返しです。認定基準は年度ごとに見直されるため、申請する年度の基準を経済産業省のページで確かめることが前提になります。
小さな事業所ほど、取り組みは少ない
厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、規模によって大きく違います。
| 事業所の規模 | メンタルヘルス対策に取り組む割合 |
|---|---|
| 労働者50人以上 | 93.7% |
| 30〜49人 | 72.0% |
| 10〜29人 | 54.6% |
同じ調査で、過去1年間にメンタルヘルスの不調で連続1か月以上休業した人、または退職した人がいた事業所は13.5%でした(休業10.8%、退職6.5%)。取り組んでいる事業所の中身では「ストレスチェックの実施」が64.0%と最も多く、「職場環境等の評価及び改善」が52.8%で続きます。

健康課題は、3つの記録から見る
中小企業が社員の健康課題を把握するとき、手元にある記録は主に3つです。
- 健康診断の結果。体の健康の傾向。個人の結果の扱いは健康情報のルールに従います。
- ストレスチェックと職場アンケート。ストレスの状態と、職場の困りごとの傾向。部署ごとの集計で見ます。
- 勤怠と人の出入り。残業、休みの取り方、休職と退職の件数。
3つを別々に眺めるのではなく、部署ごとに並べると、「残業が多い部署で、職場の答えが悪く、退職も続いている」といった重なりが見えてきます。その重なりが、最初に手を付ける場所です。
集めた声は、会議で直すまでが一周
アンケートを取っただけで何も変わらないと、社員は次から答えなくなります。小規模事業場マニュアルも、集団ごとの分析と職場環境の改善を、事業場の規模にかかわらず努力義務としています。回し方は次のとおりです。
- 部署ごとの集計を見て、困りごとの傾向を1つか2つに絞る。人数の少ない部署は傾向として読む。
- 会議で「誰が・いつまでに・何をするか」を決める。休憩の取り方、業務の偏りの見直しなど、すぐ手を付けられることから。
- 社員に、何を決めたかを短く伝える。
- 3か月後の短い回の答えで、変化を確かめる。
集める範囲と、見る人を先に決める
健康づくりの取り組みは、社員の信頼がないと続きません。国の57問の個人の結果は、本人の同意なしには会社に渡りません。職場の改善に使うのは部署ごとの集計で足ります。ナナトリの任意アンケートの答えは管理者には社員ごとに見えるので、集めること、見る人、会議に出すのは名前なしのまとめだけ、という運用を導入の前に書き出して社員に示してください。
ナナトリでは、57問の個人の結果は本人と実施者だけが見ます。会議用のまとめは名前を出さずに人数や件数で示し、見られるのは会社の管理者だけです。国の57問の集団の数字は10人以上の集団から出します。
ナナトリで回す場合
ナナトリは、年1回の全問と3か月ごとの短い回を、社員のLINEに自動で配信します。答えは部署ごとのチームワーク(同僚・上司・会社・職場環境)の数字になり、入社・退職の記録、面談と相談につないだ件数と一緒に会議用のまとめに並びます。AIの会議メモが、議題と「誰が・いつまでに・何をするか」の案を出します。
ナナトリは健康経営優良法人の認定を代わりに取るサービスではなく、認定を約束するものでもありません。取り組みの中身である、課題の把握と改善の確認を続けやすくするための道具です。外国人スタッフのいる職場はLINEと9言語の記事、職場の声の聞き方は中堅社員の記事、採用と定着の数字の見方は採用費と定着の記事で書いています。
出典(確認日 2026-09-25)
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r07-46-50.html
- 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_gaikyo.pdf
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(集団分析・職場環境改善) https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001678866.pdf
- 経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(認定基準は申請する年度のものを経済産業省のサイトで確認してください)
よくある質問
健康経営は、大きな会社のための取り組みではありませんか?
規模にかかわらず取り組めます。健康経営優良法人認定制度(経済産業省が設計し、日本健康会議が認定)には中小規模法人部門があり、小さな会社向けの基準が設けられています。認定を目指すかどうかにかかわらず、社員の健康課題を把握して手を打つという中身は、どの規模の会社でも同じです。
ストレスチェックをしていれば、健康経営になりますか?
ストレスチェックは健康課題を把握する手段の1つで、それだけで取り組みが完結するわけではありません。集団ごとの分析をもとに職場環境を直し、その変化を次の回で確かめるところまで回して、はじめて取り組みとして意味を持ちます。
健康経営優良法人の認定基準は、どこで確かめればよいですか?
経済産業省のページで、申請する年度の認定基準を確かめてください。基準は年度ごとに見直されるため、前の年度の情報や民間の解説をそのまま使うと、項目がずれていることがあります。
小さな会社でも、職場環境の改善はできますか?
できます。小規模事業場マニュアルは、集団分析と職場環境の改善を、事業場の規模にかかわらず努力義務としています。大がかりな制度でなくても、休憩の取り方、声のかけ方、業務の偏りの見直しなど、会議で決められることから始められます。
社員の健康情報を、会社が集めすぎることになりませんか?
集める範囲と、誰が見るかを先に決めてください。国の57問の個人の結果は本人の同意なしには会社に渡りません。職場の改善に使うのは部署ごとの集計で足ります。何を集め、何を集めないかを社員への説明に書くと、安心して答えてもらえます。
この記事のまとめ
- 小規模ほどメンタルヘルス対策の取り組みは少ない(令和7年・10〜29人で54.6%、30〜49人で72.0%、50人以上で93.7%)。
- 健康経営の出発点は、社員の健康課題の把握。集団ごとの分析と職場環境の改善は規模にかかわらず努力義務。
- 認定基準は経済産業省のページで年度ごとに確かめる。アンケートは会議で担当と期限を決め、次の回で変化を見るまで回す。


